(2010年4月8日その14)
アリスカンで画架を並べたゴッホとゴーギャンですが、その後二人は絵に対する意見の相違やプライドの対立などから次第に衝突し、ゴッホによるゴーギャン切り付け未遂事件が起こり、さらにゴッホが自分自身の耳切りをするという事件を起こして病院に入れられます。 そこで描いた絵の場所がこの美しい花園で、ゴッホの当時の状態で保存されています。 噴水が美しい花園。 ゴッホの絵のアングルで撮ってみました。 時間は一日戻ってアルル一日目ですので、曇り空で色彩はちょっとおとなしい写真です。 ゴッホの絵の中央にある青い屋根の小屋は今はありません。 でも建物の屋根の形が壁に残っています。 この建物はゴッホの当時、アルル市立病院でしたが、 今はespace van gogh「エスパス・ヴァン・ゴッグ」というアルルの市民センターのような建物になっており、写真はその図書館部分です。 (Van Gogh(ファン・ゴッホ=オランダ語)のフランス語での読み方は「ヴァン・ゴッグ」) フランスの高校生?達が見学に来ていました。 建物の入口。 近くの街並み。 (「耳切り事件」に至るまで) 1888年12月 ゴッホは尊敬するゴーギャンの主張する画法を試みますが、自己の表現とは相いれず、両者の心理的葛藤が始まっていました。 そして、二人の芸術と芸術家についての意見の食い違いは、決定的な亀裂を生みだします。 (二人の手紙) ゴッホの手紙:「二人の議論は目茶苦茶に電気的なものだ。時々放電した時の後の電池のように、僕らは頭がくたくたになり、議論から抜け出す。」 ゴーギャンの手紙:「フィンセントと私は性格の不一致から一緒に暮らすことは不可能です。」 ゴッホの手紙:「ゴーギャンはこの快適なアルルと、仕事場の黄色い家と、とりわけこの僕に失望したのだろう。」 ゴッホの弟であり支援者であったテオの婚約という出来事もゴッホの心理に微妙に影響していたようです。 (切り付け未遂事件) ゴーギャンが描いたひまわりを描くゴッホという肖像画を見て、 「確かに僕だ。だが狂った僕だ。」とゴッホは言います。そしてその後、 (ゴーギャンの手記によると)、黄色い家の前でゴーギャンはゴッホに切り付けられそうになります。 (私の想像) ゴーギャンの悪意を感じさせるかのような絵が、ゴッホの気持ちを傷付け、不安定になっていた心理が限界に達したのではないかと、私は想像します。 ゴーギャンの描いたゴッホはうつろな目をしています。ゴーギャンの真意は? (有名な「耳切り事件」はこうだった。・・・1888年12月30日付、アルルの地方紙の記事) ・・・先週の日曜日(12月23日)、夜11時半、オランダ出身の van goghという画家が娼家一番館を訪れ、ラシェルという女に〝これを大切にしまっておいてくれ〟と自分の耳を手渡して去って行った。 哀れな精神異常者の行為だが、通報を受けた警官が翌朝その者のところに赴くとベッドに横たわり、ほとんど生きている気配もなかった。この不幸な男は急患として入院した。・・・ (事件後にゴッホは・・) 二週間後退院したゴッホは黄色い家に帰って制作を開始しますが。ゴーギャンはもう居ませんでした。 しばらく平静だったものの、また発作が起こり再入院し、 市民がゴッホを危険人物として監禁するよう請願書を出すに至ります。 (今度はゴッホは病院に監禁され、あの絵が描かれた。) 市民の請願でゴッホは2月26日に再入院し監禁されてしまいます。 4月初めに書かれたのが「アルルの病院の中庭」。 ・・・「作品を見る限り、どうしてゴッホを狂人といえるだろう。 構図的にも明晰な頭脳の持ち主が冷静な構図をとった作品である。」(佐々木三雄・綾子『ゴッホのフランス風景紀行』) 結局、アルルの病院には三度も入院し、最後はもう発作もなく平穏だったのに、世間の無理解からゴッホは無理矢理自由を奪われました。気の毒なゴッホ、でも作品への情熱は冷めなかったようです。 (その後のゴッホ・・・サン・レミ・ド・プロヴァンスの精神病院へ) ゴッホの書いた手紙・・・「今のところ完全に平静な状態だが、新たに心の動揺が起きたりすれば、すぐに興奮状態に陥ってしまうだろう。」 ということで・サン・レミ・ド・プロヴァンスの精神病院へ自発的に入院することになります。 入院しても絵の制作ができるなら、もうアルルからは離れたかったのでしょう。 1889年5月のことでした。 (その121年後) 2010年4月10日、ゴッホの足跡を訪ね、私もサン・レミ・ド・プロヴァンスへ。 そこは糸杉とオリーブ畑がとても美しいところでした。 (・・次回に続く) ↓応援のクリックお願いします! にほんブログ村 ♪クリックに感謝。
by ciao66
| 2010-07-15 21:34
| フランス紀行2010
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Comments(10)
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mamejiro19 at 2010-07-16 00:53
こんばんは。アルルの病院の中庭、色彩もきれいで素敵なだけに、
いっそう物悲しい感じがしますね・・・。 屋根の形だけが残っているのも、なんともいえない雰囲気です。 ゴーギャンの絵は確かに気持ちが傷つけられてしまいそう。 悲しい歴史ですね・・・。
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ciao66 at 2010-07-16 07:29
明るい中庭の姿はゴッホの絵のままでした。
それと対照的に、壁に残ったゴッホの絵の小屋の屋根の形が悲劇を伝えているように思われます。 後年のゴーギャンの作品「〝黄色いキリスト〟のある自画像」は、ゴッホへの鎮魂の作品だったのでしょうか。 黄色い色がゴッホを象徴しているようにも見えます。 http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/94/0001094394/43/img1714e612zik0zj.jpeg
中庭の噴水も周囲の花壇もとても美しいですね。
青い三角屋根小屋の屋根の形だけが残っているのも、往事を彷彿とさせます。 ゴッホの「耳切事件」、当時の新聞記事など紹介して頂いて良く理解出来ました。 いつも思うことですが、これだけ充実した内容ですから 「にほんブログ村」のフランス旅行部門第一位も当然ですね。(拍手!)
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ciao66 at 2010-07-16 20:22
青い三角屋根小屋の屋根の痕跡のことは、私の旅の案内人「ゴッホのフランス風景紀行」を読んで行きましたので、
現地で、あっあれだ、と気づきました。 この本が本当にゴッホ巡礼の役に立ちました。 作者のゴッホへの愛情が感じられる一冊ですが、フランスの新聞記事もこの本に記載がありました。 「にほんブログ村」順位は日々変動しておりますが、 1位復活できましたのも、皆様にクリックいただきましたおかげと本当に感謝しています。
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トムソーヤ
at 2010-07-17 11:06
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色とりどりの花にあふれた中庭の写真が素敵です。
建物の黄色の縁と花々の黄色が微妙な色の違いを見せていますね。 そのあと、ゴッホやゴーギャンの絵が少し暗くなり、たんたんとした事実経過が、ドキュメンタリー風に続く・・・ Nスペですね。 次回は、あの有名な糸杉が出るのでしょうか。 期待しております。
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ciao66 at 2010-07-17 13:25
ちょうどゴッホが絵を描いた季節だったので具合がよかったようです。
もし冬だったら、「あれ~花は無いね~」ということになったでしょう。 ドキュメンタリーをまとめていて、ゴッホがここに三度入院したことに気づいたのです。 次回はサン・レミ編の一回目ですが、まずは街中の散歩から始まり、二回目以降はゴッホの絵の散歩道を歩きながら、郊外のサン・ポール・ド・モーゾール修道院跡(ゴッホの精神病院)へ向かい、その周辺の美しい光景を見て、復元されたゴッホの入院していた部屋に入り、最後は山裾のローマ遺跡巡り、と続きますので、何度かに分けてご案内します。 どうぞお楽しみに。
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はなみずき
at 2010-07-17 15:29
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あの精神病院が、今は市民センターの様な役割をはたし、
美しい花園で、ほっとしました。 実際の色合いとは、少し違う黄色はその頃の心の 在り方を投影しているのでしょうか? 丁寧に描かれた素晴らしい絵だとおもいます。 読者の私は、ゴッホのファンで、ゴッホの「みかた」をして いますが、 ゴーギャンもまた、人間の存在や生と死を深く考え、 文明と非文明のはざ間を彷徨った、画家であったのでしょう! 昨年観た、ゴーギャン展を回想しました。 121年後にぺんぎんさんがたどった足跡は・・・ 次回も目が離せませんね。
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ciao66 at 2010-07-17 17:12
ゴッホがこの庭を描いたのち、しばらくすると庭の状態は当然あれこれと変化があった。
亡くなってからゴッホは有名な画家になり、ここを偲んで訪れる人のために、中庭はゴッホの絵をもとに復元したそうです。 黄色の微妙な違いは絵と実際の建物でhは各々そのほうがよく映えるのではないかと・・・?? ゴーギャンも信念の画家だったのでしょう。 ゴッホは画家でもあり求道者だった感じがします。 PS.・・・アルルの病院はよく誤解されますが、当時は精神病院ではなく市民病院だったようです。ここの監禁室に3度めは入れられました。 この次に自発的に入ることになるサン・レミ・ド・プロヴァンスの病院は修道院の跡にできた精神病院で、いまも実際にあります。
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Clearwater0606 at 2010-07-17 21:59
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ciao66 at 2010-07-17 22:27
「彼の地の車」はやっぱりプジョーかシトロエンでしょうか、おっとルノーも有りましたね。
フランスではイタリアよりは国産車ががんばっているように見受けましたよ。 イタリアではドイツ車とても多しでした。
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